最近探偵社に対しての依頼が急増しているのが、お年寄りの家出調査です。お年寄りの方が痴呆症により徘徊しているのを発見するための依頼を受けることが増えました。

平成28年の警察庁の発表によると、3年連続で行方不明になった認知症などの行方不明数が3年連続で1万人を超えています。

急増している原因としては、高齢化社会による老々介護があります。又、介護する側の家族が少なくなっていることで、痴呆症のお年寄りに対する目配りが行き届いておらず、失踪に繋がってしまうことになっています。

この社会問題とも言える痴呆症のお年寄りによる失踪ですが、どのような方法により捜索をしているのか?探偵社が行っている捜索方法を紹介していきます。

1.お年寄りによる失踪が増えている原因とは?

1-1.認知症による徘徊が増えている

現在では高齢者の4人に1人が認知症であるといわれています。認知症は多動という症状が出ることによりじっとすることが困難になると言われており、うろうろと歩き回ってしまいます。平成28年度の警察庁発表によると、平成27年度における認知症が原因の失踪者届出件数は12,208件でした。

引用:平成27年中における行方不明者の状況(警察庁生活安全局生活安全企画課)

認知症の場合、何かを探してウロウロとしてしまい外まで出てしまっていることがあるようです。

最初は目的があって何かを探していたのが、途中で忘れてしまい延々と歩き続けてしまうようです。認知症になると疲れるを感じたりする機能が低下するため、徒歩で出ていったとしてもずっと歩き続け、結構遠くまで行ってしまっているケースもあります。

1-2.介護する側の人出不足

施設に入れることなく家族で面倒を見ざるを得ない環境の方が多いにも関わらず、子供の数が減少していることが影響し、面倒を見る家族自体が少なくなっていることで介護になかなか手が避けず、目が届かないという状況が増えています。

又、認知症による徘徊が発生する理由の一つに、家での居場所の無さを感じるというものがあります。面倒を見る側の心の余裕が無くなると、どうしても介護する相手に対してきちんとした対処が出来なくなります。

1-3.介護施設への受け入れ不可

公営施設は少なく順番待ちであり酷いと2,3年先となっています。有料老人ホームは非常に高額であり、入居出来る人は一部に限られています。

施設にお年寄りを入れることが出来ない家庭は、身内の誰かが見る必要がありますが、24時間常に見守ることは不可能であり、どうしても監視が行き届かなくなります。その隙に徘徊し行方が分からなくなってしまうのです。

2.失踪が判明した時点での対処方法

2-1.真っ先にすべきことは警察へ捜索願いを届出する

失踪が判明した時点で、おおごとにするのを避けようとするあまり、まずは自分で徒歩圏内を歩き回ってみたり、心当たりのあるところをひとまず自分で探そうとしてしまいがちになりますが、まず第一に警察署に対して捜索願いを届け出ましょう。

徘徊による失踪の場合、どこかに保護されているケースも多くあります。警察に通報があった時点で発見に至りますので第一優先すべきです。

但し、捜索願いを届け出たとしても警察が積極的に捜索をしてくれる訳では無いので注意してください。

2-2.インターネット上にあるサービスを利用する

認知症の方がどこかに保護されていたとしても、自分の記憶が分からず名前などの個人情報が分からない為にどうすることも出来ないという場合もあります。

そのような高齢認知症の方の情報を掲載している厚生労働省のサイトがあり、これも積極的に利用すべきです。

厚生労働省:行方のわからない認知症高齢者等をお探しの方へ

3.痴呆による徘徊を探偵社にすぐ捜索依頼すべき理由とは

3−1.認知症による失踪者の半分は死亡して発見されるという現実がある

残念ながら、現実問題として徘徊して失踪したお年寄りが無事発見される可能性は50%程度であり、発見に至らなかった残り50%の方は亡くなった状態で発見されます。

正常な方の失踪に比べ、捜索範囲が狭かったり容姿から目立つ為に情報提供を受けやすいという特徴がある反面、行き先の目安が全くつかず、更には危険な場所に立ち入ってしまいそのまま命を落とすことがあります。

お年寄りの失踪を捜索する場合には、すぐに捜索を開始する必要があります。失踪から48時間を超えた時点で死亡している可能性は80%以上です。

3−2.認知症の家族を放っておくと危険!家族に損害賠償責任が下されたケース

当時91歳の認知症の男性が、家族が目を離したほんの数分で自宅から徘徊し、そのすぐ後にJRの電車にはねられるという事故がありました(2014年)

JR側は電車の延滞などを理由に家族に対して損害賠償請求し、なんと名古屋高裁で当時85歳の妻に360万円の賠償責任が下されるという驚くべき判決が出てしまったのです。

認知症になってしまった家族の面倒を見る責任は無いとはいえませんが、どんな行動をとるかもわからない認知症の家族をずっと監視し続けることはとても大変なことです。又、認知症などがある高齢者が巻き起こす事故責任の賠償を負う可能性があるのが現状である以上、失踪が確認出来た時点ですばやく対応し、探偵社への依頼も検討してみましょう。

4.探偵による認知症の徘徊老人の捜索方法とは?

4-1.捜索依頼する場合に必要な情報とは

  • 顔・全身写真
  • 身長体重
  • 失踪時の服装・持ち物(携帯や所持金)
  • 身体の特徴(歩き方など)
  • 趣味嗜好
  • 失踪する前の行動パターン

4-2.エリアを決め、チラシによるローラー作戦で大至急調査を開始する

失踪時に利用したであろう交通手段や所持金から、物理的に移動可能な範囲を特定し、そのエリア内をくまなく捜索します。

具体的には失踪者の情報を記載したチラシを作成し、それをエリア内にくまなく配布し、見かけたらすぐに情報提供してもらえる環境を作ります。

探偵社が捜索活動する際に作成するチラシ

4-3.同じ事を繰り返す傾向がある

認知症の中には、前頭側頭葉型認知症というものがあります。

近所を一周同じ場所をぐるぐる回ったり、同じ方向に向かってだけ進んだり、同じことを繰り返したりする状態です。そういった傾向を見て判断し、捜索エリアを特定していきます。

4-4.ひたすら地道な聞き込みにより捜索エリアの拡大

お年寄りの移動手段は徒歩か自転車がほとんどです。徘徊の場合には、休むことなくひたすら止まらずに行動していることもあり、徒歩や自転車であったとしてもかなり遠くに行ってしまっているケースがあります。

その点を踏まえた上で失踪した時間から考慮し、可能性のあるエリア全般に対して地道にチラシ配布や聞き込みを実施していきます。一人でも多く失踪者の情報が共有出来ている状況を作ります。

4−5.失踪人の所持品、所持金

痴呆による徘徊の場合、お金を持たずに失踪したりお金の使い方を忘れていて一人で買い物や食事をすることが出来ない為、すぐにでも捜索を開始する必要があります。

ただし、中には食事をとることは可能な方もいらっしゃるので、飲食店などにも捜索範囲を広げチラシを配布し聞き込みを実施していきます。

中には、お金を持ってはいないものの空腹で飲食店の中に入ってきた所を保護されたケースもあります。

5.認知症の高齢老人が発見された事例

5-1.警察官に保護される

発見で最も多いのが警察による保護です。厳密に言うと、どこかで保護され警察に引き渡されることも含みます。

5-2.自分で帰ってくる

2番目に多いのが自分で帰ってくるパターンです。痴呆症とはいえ自宅までの帰宅方法を分かっていることもあり、しばらく経ってから自分で帰ってくるということもあります。

5-3.チラシ、聞き込みからの情報提供により

これは探偵社が捜索する場合の方法です。探偵社では捜索者の情報を記載したチラシを作成し、捜索範囲全体に配布します。

これにより見かけたら即情報が入るようにしておきます。積極的に情報提供を呼びかける為、有力情報提供者には金一封の提供を行います。

5-4.公園のベンチ、公共施設などで

昔からよく立ち寄っていた公園、ベンチ、公共施設などでぼーっとしている時に発見されることがあります。

捜索依頼を受ける際には、認知症以前の行動パターンについても把握し、可能性のある場所は全て潰していきます。

6.痴呆による失踪者の捜索期間・料金は?

6-1.捜索期間としては3~5日

基本的には、探偵社が捜索する場合には1~2日以内に発見することを目的として調査を実施します。というのも、この場合には命の危険があり、早期の解決がもとめられるからです。逆に5日を超えて捜索したとしても結果が変わらないこともあり、そこまで期間をかけて探偵社に依頼する意味はなくなりますので、あとは警察へ寄せられる情報を待った方が良いでしょう。

6-2.料金相場としては60万円~80万円程度

短期間での発見が求められますが、その分多数の人員と24時間体制での捜索が必要になってきますので、1日~3日の捜索であったとしても最低60万円程度は必要になってきます。会社によっては、発見した場合に高額な成功報酬が発生することもあり、その際に100万~200万程度の成功報酬が必要になってきます。

可能な限り、最初に必要な着手金は低価格とし、発見した際の成功報酬で支払うという契約にすべきでしょう。

7.認知症による失踪を防ぐには?繰り返さないようにする予防方法とは?

7-1.衣類に名前などの個人情報を縫い付けておく。名札など

高齢による認知症の方は、自分の名前や住所をはっきりと伝えることが出来ない状態になっていることもあります。せっかくどこかに保護されたとしても、身元が分からなければ家族の元に帰ることも出来ません。

その為にも、衣類の目立つ場所に個人情報を記載したものを縫い付けておいたり、名札を首からぶさ下げておくようにします。

7-2.GPS機能がついた携帯を常備させておく

最近では小型化したGPS機能付き携帯電話が多数あります。子供の安全の為にも販売しているようなものを常備させておき、いざという時に現在位置を確認出来るようにしておきます。通話機能がいらなければGPS機能だけがついた小型化したアクセサリー状のものもありますので、ポケットの中に常に入れておくようにしておきます。

7-3.室内から鍵が開けづらくして外出出来ない環境にしておく

徘徊して外に出て行っていまうような症状の時は、玄関や窓を開ける鍵の形状を帰るのも一つです。又、玄関やドアが開いたらアラームがなるような機械を取り付けることも一つでうs。

7-4.デイサービスを積極的に活用

徘徊する家族を持つ親族はとても精神的な負担を強いられることになり、自然とそのストレスが認知症の家族に向かっていることがあります。認知症の家族を持った際に大切なことは、出来るだけ怒ったりせず、可能な限り一緒に歩いたり行動をすることです。その為にも介護する家族がストレスで疲れきってしまうのではなく、一部はデイサービスに依頼し適度なガス抜きしましょう。

7-5.近所の民生委員に連絡しておく

近所の民生委員には事前に徘徊の可能性があることは伝えておき、顔などの情報を共有しておいた方が良いでしょう。万が一徘徊により失踪した場合には協力を仰ぎ、近所の方や民生委員にも見かけたら連絡してもらえるようにしておきます。

まとめ

今回書いたように、お年寄りの痴呆・徘徊問題は今や社会問題の一つとなっています。社会問題化していることもあり、各機関や自治体による早期発見に向けた取り組みも増えてはきているものの、まだまだ解決に追いついていない実情があります。

人探しのプロである探偵社こそが、この問題の解決に最も近い存在として活躍出来るからこそ、積極的に頼ってみるのも一つだといえます。