身内が家出や失踪が発生した場合、その身内が警察へ捜索願いを出すのが一般的な手続きとなります。ただ、全ての家出人や失踪人をすぐに捜索してもらえるという訳では無く、誘拐や連れ去りなどの事件に巻き込まれている可能性があったり、遺書などが見つかり命の危険があると判断した場合のみが捜索対象となります。

その為、家出や失踪後すぐにでも探し出したいという場合において、警察とともに探偵社や興信所に捜索を依頼されることにもなります。警察の捜索方法と探偵の捜索方法は違っており、双方が協力して手の届かない範囲を捜索していくことこそが、最も効果的な捜索になるからこそ、積極的に両者が情報共有していく必要があります。

そこで今回は、警察OBである田中氏と、探偵である安井が対談し情報共有した内容を紹介していきたいと思います。

家出人や失踪人の捜索願いが出された場合の警察の対応

警察OB


警察OBの田中氏と探偵の安井

事件性があるのか?命の危険があるのか?により動き方は違う

田中:生活安全課の保安係というところがあります。そこへ届けられるのですが、届けられる人は親族とか親とか兄弟とか、誰もいなければ雇い主や家主も届け出ることが出来ます。

安井:調べたところ、平成26年度の警察発表の資料だと、警察のところに家出の届け出が、8万人くらいでしたが、そのうち特異家出人は何人くらいなのでしょうか?

特異家出人とは

命の危険があったり、事件性のある失踪者のこと。警察へ捜索願を出す際に、一般家出人と特異家出人に振り分けられます。

田中:それはもう全然少ないですね。特異家出人というのは犯罪に巻き込まれている恐れがあるんじゃないかとか、自殺の恐れのある方とかが特異家出人という風に届けが出されています。

安井:その特異家出人というのは大体家出人の中の何パーセントくらいなんですか?

田中:ほんの一部だと思います。家出人というのは普通の家出人としての届出があった人はほとんど見つかっていたり、帰ってきたとか、知り合いの家にいたとかそういう場合が多いです。実際に特異家出人の届け出というのはあまりないですね。

自殺の恐れというのは年に数件あるんですけど、それ以外で事件性があるんじゃないかというのは1年に1回あるかないか、それくらいの定期だと思いますね

安井:その時はチームかなにか組織されるんですか?

田中:内容によりますね。たとえば昔平成6年くらいに愛犬家で6人くらい殺されたという事件がありました。あれほどの事件なので、捜査一課に連絡して、応援をもらって、大々的にやるといった手順でした。でもそんな事件はごく一部です。

事件性は少ないものの、家族が家出や失踪をしてしまった場合の対応方法は?

安井:たとえば、そういった大きい事件ではなく家族が突然失踪してしまったという場合は、どういう風に手続きをするのがベストなんですか?

田中:とりあえずはしっかりと不審な状況なのかそうではないのかに関わらず居なくなったと警察へ届け出をする。普通のちょっと揉めてしまって出ていったんだと思いますとかでもいいわけですから。家出人捜索願を住居地の警察へ届けて頂くということになります。

安井:結局その時に、普通の家出という風に受理されてしまった場合に、僕の経験上ですが何もしてもらえないのでは?と思っています。不審な点のあるなしに関わらず何もしてもらえないものなんでしょうか?

田中:内容にもよります。とりあえずはいろんな資料頂くので、今ならコンピューターのシステムで全部入りますから、それを全国に一斉に手配すると。

安井:それはどっちでもですか?

田中:どっちでも、それはもう間違いなく。その中でたとえば家出人が失踪中に交通違反や事件事故にあったとか、もちろんなにかで検挙された場合に、必ず前科照会とかそういう照会をします。それをすると届け出をしていたら出てきます。だから届け出さえしていれば、指名手配と一緒で、そういうところでなにかいろんな事件事故で関係者の中に出てくるとね。ヒットしてくるわけです。

安井:ただ、職務質問とかで該当したところで、本人に促すことしか出来ないんですよね。

田中:成人の場合はそれは本人の意思ですから、本人がいやもう放っておいてくれと言われればそれまでですけど、それはやっぱり届出の内容がいろいろありますからね。そういうのを見てこれはちょっと放っておけないなと思ったら出来るだけ説得して、とりあえず署まで連れて行って、それでもだめなら最終的にご両親とかに「本人は元気でやってる」と伝えとくよと、あなたの方からも伝えれるなら伝えておいて下さいと説得します。

それで、とりあえずの事もあるのであなたの携帯番号も全部伝えてほしいと、住所教えるの嫌だったらもういいと、いう所まではしますけどね。でも普通の家出だと勝手に出てきただけで悪いことはなにもしてないと言われるとちょっとね。ただ、問題がなければ届け出を出されてる人に元気でやってるからご心配なくと伝える事はできますが、個人情報の関係でそれを言ってしまうとあとから文句言われることのないように。

だから、案外その手配していれば、指名手配の被疑者なんかよりはヒットする確率は高いと思いますよ。だからやっぱり絶対出しておくべきだと思いますね。

自殺の恐れや事件性がある家出や失踪だった場合のケース

携帯電話の電波からの位置特定や車のNシステムで捜索

安井:たとえばもう遺書が見つかっているようなケースだったら

田中:それはもうやっぱり状況見て、出来るだけたとえば携帯電話なり車なり、捜査はすぐやりますよ。緊急に。

安井:携帯電話と言うのは?

田中:携帯電話の通信から位置情報を割り出します。警察はその協定を結んでますからね。捜索令状とか検証令状とかなしで、電話局に頼めば位置情報の割り出しはやってくれますよ。

たとえばいま通話がありましたという段階で、定期的に電話局からもらうか、通話があった時点で、どこでアンテナ出てますかとか、今だったらGPS機能がついている携帯電話だったらピンポイントでわかります。

だからたとえば3つのアンテナの中のこの辺ですよとかだったらみんなで集中して探しに行くというようなことは出来ますね。たとえば車に乗って何処か遠くにでも飛んでいるということであれば、そこの警察へ依頼して、こういう車がいて、もしかしたらリサーチするかもしれませんけど、今後お願いしますと、人の手配は出来ますね。

探偵が行う特異家出人の捜索は携帯会社と銀行からの情報提供を促す

安井:探偵社側としても、捜索に当たり

  1. 特異家出人扱いになっていること
  2. 捜索に関して身内から委任状を預かっていること

が前提ではありますが、それをもとに携帯電話からの情報提供をお願いして共有していいただけるところがあります。電源が入っている状態の場合、電波状況からある程度の位置を提供していただけますね。どうしても精度は悪いんですが、その周辺の簡易宿泊所やインターネットカフェなどを重点的にローラー作成で聞き込みします。

あとは、その付近に家出失踪人の知人、友人がいないかも調べます。

田中:確かに携帯電話会社になんとかしてもらえないだろうかと言えば、特異家出人で委任状があるなら対応してもらいたいですね。中には、内緒ですよという人もいるかもしれません。昔はそういうのもできたんですけど。今は厳しいと聞きますね。

安井:あとは家出失踪人が所有しているキャッシュカードの銀行にもお願いして、ATMの使用履歴や使用場所があった場合にはすぐに連絡してもらい、急行します。キャッシュカードを持って出て行っている場合は生存する意思が高いので、特異家出人として受領してもらえないので、銀行側も対応してはもらえないケースも多くあります。

家出失踪人は死亡しているケースも当然ある

安井:実際に行方不明で来て、亡くなってるっていうケースもやっぱりありますよね。

田中:多々ありますね。

安井:それってどれくらいの感じで、全体の何パーセントくらいってありますか?

田中:なかなかピタッとヒットするというのは見つからないですね。たとえばまだ顔の判別ができる状態で死体が発見されれば、写真とかある程度見れますし、DNAの鑑定が出来る資料があって、事前に登録してるとか、歯形があるとか、そういう場合であれば、この届人はよく人相がよく似てるとなったらそれと合わせられます。そうなると案外見つかりやすい。

突然出て行ってしまった家出人・失踪人のDNA鑑定方法は?

安井:いきなり突然失踪するケースがほとんどだと思うんですけど、突然失踪してしまった場合って、そのDNAの元になるものはどうすればいいんですか?

田中:たとえばその人がアパートに住んでいて、急にいなくなったといった時には、その人の歯ブラシとか、ヘアブラシとか、洗濯してなかった下着とか、時計でも指輪でもなんでも、そういう装飾品などでも精度のいいDNA鑑定ができます。昔みたいにもう血痕で何ミリ以上何CC以上なかったら出来ないとか、そんなことはなくなりましたね。ほんとに精度がよくなってますから。そういう物を出来るだけ置いておく。

通っておられる歯医者さんがあればそこで今はもうほとんどパノラマ写真全部撮ると思うんですよ。これはまたもし白骨で見つかった時とかいろんな顔がわからないという状況で見つかった時に、これはピタッと合いますからね。歯は何本欠けていようが、この顎の骨折の形状とかね。抜けてる所とかその窪みとか、これはもうビタッと見事にはまりますからね。

だから法医学というのと、警察では法歯学というのと、そういう人に合わしてもらったりするんですけど、そういう通ってる歯医者さんとかがわかったらそこへ置いといてくださいねとお願いしておく。または骨格があれば、胸部写真なんかでもそこで大人であれば合わせる事も出来ますからね。いろんな物が資料になると考えられますね。

家出人・失踪人を捜索する場合における警察と探偵の役割分担

安井:お互い、家出人を捜すとなった時に、警察から見て、警察側が出来ないこと、私ども民間だから出来ることはありますか?

田中:ある意味で言うと違法性のギリギリのとこの、入れない部分が警察よりも民間の方が多いというか、なにかあっても公権力が侵害するというよりも、まあ緩やかというか、そういう違法性のギリギリの所の捜査っていうかね、それがどんな捜査方法があるんだと言われるとねなかなか難しい。

警察でもなかなかね、堅い所は警察だと言っても協力してくれませんからね。それはやっぱり、脅すなりして、ちょっとずつ入り込んでいくというか、そういう所じゃないとなかなか難しい。

安井:それこそ特異家出人だったとしても、全てのその人の捜査をやるわけじゃないんですよね。

田中:いや、それはやっぱり犯罪に巻き込まれてる恐れがあればとことん行きますよ。ほんとにこんな事をしてもいいのかという事もね。

安井:それは、それぐらいの対応できる状態であるとか、空いてる人間がいないとか、そういった事というのは起こり得ないんですか?

田中:それは確かにありますよ。特異家出人の場合でもその状態、大小もあるでしょうし、信憑性というのも大いにあるので、その受け取る側がどれくらいの犯罪に巻き込まれてる可能性があるかどうかの判断が出来るかどうかですね。

安井:逆に言うとそこまで簡単には、あまりにもただ単純に事件性もあんまりわからないし、というのは受理はしてもらえないという感じになるんですかね。

田中:初めから事件に巻き込まれてるとわかっているのであれば、刑事課へいくべきですからね。そうでなければ、警察には相談という場所もありますし、とりあえずはその保安の方にとりあえず届けを出すと。そこで、はっきり言うと大げさにこんなことあったと、ひょっとしたら死ぬかもしれないですとか、この間からずっと悩んでたんで、何とか生きてるという証明が一つでもあれば、それでもいいんですとかそう言ったら、携帯電話の通信記録探ってもらえるかもしれません。

こっちからも携帯電話に常にかけてみるとか、着信拒否でもなんでもあったら、生きてるという証拠ですから。そういう事も大事ですし、そういう事であれば、ある程度は向こうも刑事課と相談して、携帯電話会社に事実があるかどうか確認するかもしれません。それがあれば、例えば警察の方から、警察の電話というのは、大阪の場合やったら1234とか、119からかけてもらうとか、110からかけてもらうとかしたら誰かわかるわけですから、向こうも出やすい時もあるし、そこで生存確認できることもあるんですけどね。

だから大げさに言った方が、より僕らも心配になってきますからね。まあ僕らがとにかく言ってたのは、その時の受理してくれた人の感性もあるわけですよ。正直言って当たり外れが。だから大騒ぎしたらいいんですよ。大騒ぎして何にもなかったら一番いいんですから。

安井:それは自分が住んでる管轄以外は無理なんですか?

田中:いや大丈夫。それはそれで向こうに行くし、大きな事件であれば本部を通じて行きますからね。それはもうどこでもいいと思います。

家出人・失踪人が発生した際の警察での対応

警察窓口への対応に不満を感じたら同じ署内にある警察相談へ

安井:たとえばその警察窓口の方と、どうしても合わないというか、自分の思いを受け取ってくれなかったかもしれないと思って、違う所に行くっていうのはありなんでしょうか。

田中:それはありですよ。それもありですし、例えば刑事課であかんかったら相談の所へ行くとかですね。

安井:その相談というのは?

田中:警察相談っていうのがあるんですよ。そこには大体刑事さんで、OBというか熟練した人で、そういう人がいます。

安井:その同じ署内に?

田中:同じ署内に。そこへ行って、色々相談してみるとか。例えば、保安係に「ちょっとこんな事があって、捜索願を出しにいったんですけど、実は心配なんで、なんとかいい方法とかありませんか」といった相談なんかをしてると。

それで、所轄の対応が悪ければ、本部に広聴相談というのがありますから、本部へ行って、「所轄の人には申し訳ないんですけど、そこであんまり真剣に受け取ってもらえないので、なんとかいい方法がないでしょうか」と相談すると、本部から、「こういうの特捜から上がってきてるけどどうなんだ」とか「ちゃんとしているのか」というのがね。色々な圧力のかけかたがあるので、そのへんはいろんなツールがあると思いますね。

僕も色々考えてみたんですけどなかなか私が今ここでね、なんとか探してみろって言われたらなかなかしんどいなと思う。色々な事情があって、まぁ大体こんなとこだろうと、そこで張り込んでいたら出てくるだろうとか、見つかるだろうとかであれば別ですけど。

警察が聞き込みで重要視しているのは身近な人間の感性

田中:一つ言えることは、僕らがやってきた事件でもそうですけど関係者からとことん聞き込んで、ほんとの事を言ってくれるといいんですが、都合の悪い事は隠して都合のいい所だけ言う人がいるので、その辺がなかなか難しい所もあるんですけど。だから包み隠さず言って頂くというのが、やっぱりこれもベテランの人もいると思うし、そういう調査しているベテランも。それは何回も経験してみて匂いを嗅げるかどうかですね。なんとなくその辺の匂いを。

だから僕らが一番大事にしてることは、人を探したり、犯罪捜査するときに何を一番大事にするかというと「僕は気になってるんです」とかそういうところを、相手のそういう思いをどれだけくみ取れるかですね。やっぱり身近な人にそういう感性とか思いというか、それはやっぱり大事ですからね。最終的にはそこに戻ってくる。

やっぱり身近な人が一番よく知ってるわけだし、だからその人達の、「いまあんなところに行ってるんじゃないか」とか「こんなとこ行ってるんじゃないかな」とかっていうのは大事にしてる。そこは重点的に。「あの子やったらこんなとこ勤めてるんちゃうかな」とかね。「あんなとこでおるんちゃうかな」とかそういうのはあると思うんですよ。そういう所を第一にね。見てあげるという事はやっぱり我々捜査もそうですけど、そういう事はやっぱり大事やと思いますね。

安井:探偵側に依頼に来られる時っていうのは「警察でも届け出を出したんだけど、そんなに積極的に色んな所に捜索してくれるわけではない」という事で、こっちに依頼をされて、こっちはこっちで、家の中の様子、家の中の物とかパソコンの中とかそういった物から推測して、どこらへんの方向に行ってるとかそういう当たりをつけて、その辺の宿泊施設であったりマンガ喫茶であったりとかっていう所をローラー作戦をするんですね。

それで、そこの部分で、重複しても仕方がないと思うんですよ。警察の方が出来る仕事。そうやって考えたら、警察の方が手出しが出来ないというか、僕たちだから出来るような事っていうのがもっとないのかなって思ってたりするんですけど。

家出人や失踪人を捜索する上で警察犬は有効か?

安井:例えばですよ。警察犬とかを、現実的に山の中にいるかもしれないと思ったら、山の中を警察権を使って探したりすることってあり得ますか?

田中:ありますよ。家出人に自殺の恐れがあるとかね。頼めば。

安井:捜索する山をどういう風に割り出すのかなっていうのもあるんですけど。

田中:まあ色々遺書とか通話記録とか、それがあるから行ける。だからなかなかある程度具体的に何か資料がないと、情報なりがないと、例えば生駒山探してくれと言われてもそれはなかなか難しいですね。前ここのロープウェー行ってたし、とか、前誰かが見かけたとかいう話があれば行ったり、だからその辺が直近の資料というか、ある程度の具体的なものとかそういうのがやっぱり必要だなと思いますね。

でも、探偵社でも警察犬をウリにしている会社を見たことがありますが、どうなんですか?

安井:あれは嘘ですね(笑)これまで警察犬を使って捜索したことはありません。というよりも、さっきの話でも出ましたけど、警察犬が捜索する時って緊急性があって命の危険がある状態での捜索なので、それは間違いなく警察の方にお任せすべきであると思っています。

探偵の役割ってそんなところをチョロチョロして邪魔するんじゃなくて、警察では手の届きにくい住んでた部屋の捜索であったり使用していたパソコンの解析、もし自殺する目的では無かった場合に果たして家出失踪人がどこにいくかの当たりをつけて、それこそ人海戦術でローラー作戦で当たりまくることだと思ってます。

家出人・失踪人捜索におけるDNA検査での捜索方法

安井:例えばさっきのDNAの話なんですけども、今現状で生存していて、普通に何かしらもう失踪して生活している方を、今持ってるDNAで探し当てることって出来るんですかね。

田中:例えば、行方不明者の届けの所にDNAがわかっていればDNAの登録もしてくれるんですよ。DNAありと。それを登録しておけば、犯罪現場なりで遺留されてる血痕とか、どこかの事故で、採取してきた血痕のDNAとたまたま合ったとか、という事が考えられますね。そういうことで、今のDNAの鑑定してくれるような民間の業者っていうのが20万くらいかかるでしょ。

安井:親子関係を確認するとか。

田中:そうそうああいう形で。親子関係ではなくてその人のDNAだけでどれくらいかかるのか知りませんけど、民間のそういう所だと20万くらい、1回ね。僕らも弁護士さんにこういう所でやってくれてるんだなと聞きましたけど。そんなに手軽にみんなが誰でも出来るという状態ではない。額は多分請求されますからね。

安井:ということは事件に巻き込まれてるとかじゃないと、判明させようがないですよね。今現状で普通に生きてる人は。

田中:例えば拉致されたとか、例えば警察として一番初めになにかDNAを採れるものありませんかと、世の中捜索したり、やっぱり身内から。そういうのがなければ、やっぱり親とか、兄弟のDNAをまず頼ってですね。そこをまずしっかり抑えて、なにか出てきたときに、それと合わせてみる。矛盾があるかないかという事で。もう何十億分の一で合いますから。ほとんど合うと思います。それを親子兄弟関係のDNAと合わしてみたら。

特異家出人の場合にはすぐに携帯と車の情報を集める

対談風景

安井:特異家出人と認められた場合というのは、さっき捜索の方法はお伺いしたんですけども、捜索から発見に至るまでの期間というか、それこそもう特異家出人として、なったら、ほとんどの確率で見つかる事はあるんでしょうか。

田中:いや、それはなかなか見つからないですね。例えば警察の場合は特異家出人というのは犯罪で殺されてるかもしれない。捜すと同時に犯人捜すわけですから、色んな関係者をその辺の資料と合わせて、大体どの辺か。反対からいうとこの間の殺害された少年とかあの子らみたいに、先に被疑者を捕まえて、そこから聞き出すとかね。でもなかなかその行方不明になってる人の、殺される直前まで携帯電話が繋がってるとか、車の後を追えるとか、というのはある程度の場所が特定できるけども。

それ以外はなかなかその届け出を元にだけしてその人を捜しだすというのは難しい。ただもちろん犯罪に巻き込まれる恐れのある人で最終的に足はどこにあるのかと言ったら、その最終の駅はどこにあるのかとか、駅とか、近くの店とかコンビニとか全部ビデオ撮りますからね、それで皆ビデオ見ながら、最終の足は確認します。

ここに何時ごろ来てるとか、ここを何時ごろ通った、駅は何時ごろ出たとか。その辺をずっと追っては行きますけどね。その日の足取りとか、ほんまにパッといなくなってしまうと、なかなかすぐはね。だから今一番やるのは携帯電話ですね。携帯電話の動きがもう一番早いというか。車とか電話でしょうね。

病院からの失踪

安井:ということは、例えばその特異家出人というのが、第三者による危害みたいな、可能性があったら、ある程度認められるケースなんだろうなと思うんですけど、自分一人で行動してたり、自発的な行動で誰も巻き込んでなかったりした場合っていうのは、どうなるんですか?認められづらくなったりとか。

田中:例えば、自殺の恐れがあるとか、自傷の疑いがなかったかとか、自殺の恐れがある場合の捜査っていうのはやっぱり犯罪捜査と同じようにね、ツールとしては同じで、やり方も準じて。それに準じてやっぱりある程度生命という所が大きな任務ですから警察は。だから死にたい奴は勝手に死なせろというわけにはいかない。やっぱり見つけてあげたい。なんとか思いとどまらせたりとか、出来れば助けてあげたいという所で最大限動きますけどね。

僕も病院にいたけど、病院でもその部屋に病気になって、死にたいと言って出ていく人も、行方不明になる人もいますからね。それはもう必死ですよ。必死です。それは管理責任もあるけどね。警察にも言うし、病院も必死で探して。

安井:病院の方が捜されるんですか?

田中:病院も捜します。警察にももちろん言います。病院としても必死で捜しますね。

安井:そういう場合ってどこらへんで発見される場合が多いんですか?

田中:それは例えば点滴抜いてね、パジャマで出て行ったらそんなに遠くへは行ってない。

安井:そういうのって、痴呆症とかそういった事ですか?

田中:痴呆もありますしね。ちょっと精神的な病気の人もいますので、そういう人が手首を切って、救命に来る人もいるわけですね。そんな方もやっぱり救命から抜け出して、また死にに行こうとする。というこもあるわけです。だからそんな場合だったらそんなに遠くはないし。

もちろんバスの営業所へ行ってバスの運転手に聞いてみたり、タクシー会社に手配してみたり、近くの駅に手配してみたり。もちろん病院のガードマンに聞き込みしてみたりね。こんな人が出ていかなかったかとか。まずビデオを全部確認してみたりとか、その程度は当然します。見つかったらほんとにホッとしますよね。ほんとに。もううれしいですよ。家の中に入って出てこない人もいますしね、どれだけノックしても出てこない人もいるけど踏み込むわけにはいかない。というような場合に、なんとか車で待って、僕は最高10時間くらい家の前で車の中で待ったことありますよ。じゃあ夜中にぼーっと出てきた。なんで言ってくれへんのか、怒っても仕方ないけどね。

なんで言ってくれないんだ、みんな心配してるよって言ったら、すいませんとか言って。死にたい思ったけどなかなか死ねないですねって言う人もいますしね。

家出・失踪が再発しない為には入院も必要

安井:そういう方ってやっぱりなにかしら心に抱えてらっしゃるわけじゃないですか。そこに対して発見したとしても、再発しない為になにかしたりするんですか?

田中:それはやっぱり拘束出来るような、そういう思いを持ってる人はやっぱりそういう施設に移動させるとか。

安井:そういう施設ってあったりするんですか?

田中:もちろん精神病院、措置入院もあるし。同意入院もあるし。

安井:本人が望まなかったとしても、家族が心配で。

田中:心配したりですね、例えばお医者さんが判定して「この人は自傷の恐れがある」ということであれば。この間の神奈川県の施設で19人殺した人。あんな人みたいに措置入院というか、入院させる事もできますしね。同意入院の場合は本人が出ると言ったら止められない。

でも僕らの場合は本当に危ないなと思うときは出来るだけ本人を説得して、自分で入ってちょっと落ち着くまでお世話になりなさいという風な形で預ける以外にないです。もう死にたいと思う人は止められないですよ。正直言って。だからそんな人はどれだけ早く見つけ出すか。見つけ出して助けても、2度することは3度、4度行きますから、死ぬまで行きますから。ほんまにいたちごっこみたいな。それはほんとに申し訳ないけどね。家族の人には申し訳ない。ほんとに気の毒。

安井:再発をしない為には、やっぱりそこからすぐにでも、心のケアをしないといけない。

田中:やっぱりそういう病気というのはなかなか治らないというか。何を飲んだら効くかとか効かないとかじゃないですからね。心の病気ですから。本当にケアのしようがない。僕らはほんとに寄り添ってあげるというか、それしかないと思いますよ。怒っても仕方ないしね。がんばれって言う言葉もダメ。死にたいよなっていうくらいでいかないとなかなか上手く対応出来ない。

家出人・失踪人を捜索する上での探偵の役割とは

安井:今お話しを伺う限りだと、やっぱり事件性のあるものっていうのは、もう警察に任せてしまって、多分そこに探偵が入る余地があまりないと思いますし、出来ることはないと思いますよね。

でなくて、やっぱり自発的な失踪であったりとか、そういうちょっと動きにくいものというか、人数かけて総動員でやった方がいいものなんかは、探偵社とかが一気にやった方がいいのかなって、思ったんですけど。

田中:そうですね。ストーカーとかそういう関係なんかにも共通しますが、警察に任せた方がいいんじゃないかというのもいろいろありますけど、これも色々ご存じの通り、やっぱり手が届かない所が多々あります。

反対に言ってみたら、例えば警察の状況を見ててですね、被害者の方の状況も見て、困惑してる人の状況も見てですね、ある程度お手伝い出来る分は探偵社や興信所ではあるかなと思うんですよ。ボディーガード的なね。常にちょっと注意してあげるとか。警察の手の届かない所はそういうプライベートなセキュリティーの方がいいかもしれないですね。だからそれは積極的にしてあげる事も大事かなと。大々的な事件は別にして。

やっぱりあんまり言うと嫌がられるというか、色んな皆さん思いもあるかもしれませんが、やっぱり大げさに、必死に、何度もまだわかりませんかと、捜索願出してもね、月に1回でも保安の方に足は運んで、しておけばね、やっぱり全然違いますよ。

指名手配犯逮捕の経験から学んだ家出・失踪人捜索の考え方

安井:届け出が出されてから、失踪してから何時間以内に見つからないと、命の危険があるみたいなのってあったりしますか?

田中:それは原因によって違うでしょうね。一番怖いのは子供が迷子になって、痴呆症の方とかが迷子になって、長時間。明るい時間帯に見つからないと非常に怖いんです。どこかにはまってるかもしれないし、誰かに攫われてるかもしれないし、なにか身の危険が迫ってる、時間が経てば経つほど。暗くなるというのも一つの大きな要因ですし、そうなるとやっぱり警察はほっとけないですよね。

この間の山の所で置き去りにされた子供が、頑張って自衛隊の小屋で見つかったりしましたけど、あんなんでもやっぱりほっとけませんよね。とことん山狩りするとかですね。

安井:個人的な体験談なんですけども、私が行った家出人・失踪人の調査でも、やっぱり亡くなってしまうケースが何回かあって、全て事件性はないんですが、死ぬかもしれないし、遺書はないんだけど、もう理由がないと。

結果亡くなっていたんですけど、やっぱりどうしても警察には届け出は出すんだけど、どこにもあてもないものを捜索しようがないという所で、私共も同時並行でやって、結局まあ全部出ていって翌日までには亡くなってる感じで、死ぬという前提で出て行ってるって感じなんですけど、その辺で、探偵社が担える役割っていうのがもっとあったりするのかなって。こういう風なことをするともっといいんじゃないかみたいなのって、警察から見てありますか?

田中:例えば自分が探偵になったとして、頼まれたとして、色んなケースありますけども、どんな資料があって、なにが出来るかっていうと、考えるとそれはなかなか、ふっと思いついてね、動けるかっていうとなかなか。最終的に携帯電話はいつまで通じてましたとか、最後に見たのは誰ですかどこですかって、その辺をしっかり聞いて、日頃からどんな事をね。

とりあえずは、心当たりはなんですかと、彼がよく行く所はどこですかとか、友達は誰ですかとか、そこらへんからしか入られないでしょうね。そこらへんでなにかしらどこか目標決めて。

安井:家出失踪人が死亡した案件に共通して死亡理由が、全くわからなくて、痕跡もないし、携帯持っていってないし、亡くなった場所もなんでその場所なんだっていう。感じだったんですよね。

田中:それはもうお手上げ状態だと思いますね。ただ人を捜すというのは、僕も指名手配して追って走り回ってしてても、常に思ってることは、僕が動いたら相手も動くと。我々がじっとしてると相手もじっとしてると。だから必死になって動かないとダメだと、動いたらどっかで必ず何かが動くと。僕はそういう思いを持って、やる時はそうしてるんですけどね。

それとやっぱり気になるところは必ず遅くなっても、夜中になっても足運んで、行ってみる。そこでやっぱりほんとに捕まるというか、ほんとにもう奇跡的な出会いがあるんですよ。僕なんかでもほんまタイ人のね、集団で殺人で起こった奴なんかでもね。タイ人の3兄弟がおって、一郎、次郎、三郎、通称。その内の一郎っていうのがね、タイの言葉でターっていう名前の奴やねんけど、それを指名手配して、通称名で指名手配して捜してて、僕が今住んでる辺に当時、平成3年4年頃っていったら、タイ人がいっぱいおったわけですね。

それでたまたまそこへ、あの辺行ってみよかということで行ってみたら、たまたま、なんとなしに車から降りて、うろうろずーっとしてて、すーっと向こうから来る奴がおって、こんな奴かなあと思って、ター!と呼んだらパッと見よってね。それでほんまに奇跡的に捕まったというね。そういう経験を僕らがしてるんですよ。だからやっぱりね気になったらとりあえず行ってみる。誰かが気にしてる所も行ってみる。そういう時しかあてのない時はね、それしかないですね。

やみくもに、警察やからやみくもに動けるんやけども、それはやっぱり民間のね、企業として、人手とか色々考えるとですね、そんなにおかしな所ねうろうろ出来へんし。だけど基本的にはやっぱりその人の普段の行動とかそのへんをしっかり、最終の所を確認するなどして、自分やったらどうするやろなと身を置き換えてみる、というかね、その人の立場に立ってみるということしかないでしょうね。

ほんまにもう理屈とか理論的とかなんでもないんやけども、人を捜すとか物を捜すとかそういう事やと思いますね。だからいつも言うんやけど家の中で物見つかれへん時と一緒やと。なんぼ捜しても見つかれへんのに、たまたま捜したらこんなとこにあったとか。皆経験してると思いますけど。僕が捜したら見つかれへんかったけど嫁はん捜したらすぐ見つかるとか。そういう色んな物の捜し方というかそのなんとも言われへんけども、その辺のやっぱり感性というか、なんとなくやっぱり最初の第一印象でもその辺の思いっていうのはやっぱり大事にして、行く以外に、ないかなと思いますね。一言でどういったええんやろかと思いますけどね。

安井:そのケースのその状況でしか、それぞれあるから、一概に言えないっていう事ですよね。

家出人・失踪人捜索を行う上での方針の決め方

出来るだけ家出・失踪した人物の思考回路になりきる

田中:絶対に事件と一緒で、同じ事件は全く無いのでね。だからマニュアル通りの事は全く出来ない。僕はマニュアルは嫌いだから。それはそれ。その事件はその事件だから同じことしたらいけない。絶対同じ状況はないんだから。基本的にはルーティンみたいのはあるにしても、具体的な事については、前はこうしたからこうするっていうのはないでしょう。でもそうはいうものの、大体いつもこういう事はこうなるんやという事も事実。

安井:絶対に聞かれる、確認することって何かあるんですか?例えばその捜索人を捜していく上で。これとこれとこれは絶対把握しておきたい情報というのは。

田中:それはやっぱり一番基本的な事は本人の生い立ちとかですね、性格とか、その辺の個人情報ですね。本人の性格とか日頃の行動、生活範囲、嗜好、スポーツとか。なんでもいい。例えば一つの項目にして、全部聞いていけるような一覧表みたいなの作って、そういうの頭において、一つずつ順番に聞いていく。

好きな飲み物とか、どんなとこ飲みに行ってるんだとか、付き合ってた彼女はいるのかとか、どんな事が好き・嫌い、もう何でもいいです。出来るだけその人に関する情報を聞き出すという事で、そんな人間だなという事になると、また自分もそういう思いでね、なりやすいし、そういう思いの人間だから僕らとはちょっと違う思考、行動はしないかとか。こんな人だったら、こういうとこ行くかもしれないとかね。

僕らみたいなのは全然ネットカフェとかは行きませんけど、そういう所へ行って朝までいるかもしれないとか。鉄道オタクで色んなとこに乗ってうろうろしてるかもしれないしとか、そういう色んな情報が得られると思うんですよ。とりあえずは一番最初に何が、その個人情報の問題も後になって色々問題になるかもしれないけど、まず顔写真ですね。直近の顔写真。これを多数用意しておくと。それで必ず連絡して欲しいというような、なにかそういうペーパーなりを、関係する所にお願いして回るというね。

これがやっぱり後から、問題になるので、表のとこには貼らないようにお願いしとかないとね。例えば女の子なんてよく水商売に入って来る子が多いから、何千件とありますけど一軒一軒回って、僕らの連絡先書いて、ここへもし来たら電話して下さいとか言って回る。そういうのも可能ですからね。それはとことんやりますよ。その辺で案外見つかる事もありますけどね。でもまあ確率的になかなか難しい。皆ほら、嫌がるでしょそういうの。

安井:それは警察っていう立場だから向こうも従わざるを得ないって事もあるんですかね?

田中:警察だから余計関わりたくないっていうのもあるので、反対に、例えば親が行かれたり、家の娘ちょっと家出してどこにいるのかわからないのですと、すみませんけどこんな娘来たら内緒で連絡してくれませんかと行った方がね。頼みやすいというか。ある意味では言いやすいって所もあるかもしれませんね。

その辺にいるというのがわかるなり、それは全部というのは回れませんからね。この辺で見かけた人がいるとか、というような場合はね、そういう可能性もあると思いますけどね。色んな家出の関係で特に身内なんかの場合は、どんなのがあるかわからないけども、やっぱり1ヵ月に一回とか2ヵ月に一回とか、戸籍謄本をきっちりと見て、附票とかね。どこにどんなのが出てくるかわからないので、それは確実にしとかないといけないし。

例えば不動産を所有してる人であれば登記簿をあげて、常に確認しとくとかね。そういう事がやっぱり必要だと思いますね。それとか保険の契約を問い合わせで確認。親か何かであれば出来ると思うんでね。「それは個人的な事ですから言えません」という場合がありますから、生きてるかわからないといった場合だったらそれは有効で、それは向こうがわかりませんという事は生きているという事がわかりますからね。初めから相手にしてくれないのは別ですけどね。ある程度のとこまで聞ければね。それは言ってくれると思います。現場言ってまあ足運ばないと、電話では無理ですね。

安井:なるほど。わかりました。人間の最終的には見つける話だから。自分で失踪する意志を持って逃げてる人を判明させるって事は、もうほんとにアナログな作業って事ですよね。犯人なんかだったら特に逃げようという意識が強いから難しいんですよね?

田中:そこはやっぱり警察が指名手配してしまうとね。警察が追おうとすれば、例えば僕がここにいて、なんか北海道とか九州で情報が入ったら、僕がすぐ5人くらい連れて飛んで行けるし、自分で捜査も出来るし。指名手配とかだったら捕まりやすいですよ。写真もばらまけるしね、色んな所脅しにかけて、とことん戸籍謄本確認して、親戚一同の一覧表作って、いとこはとこ何代上も下も全部出して、その家回ったりしてね、

半分嫌がらせみたいな事もするわけですからどこかでやっぱり得れますよ。僕ら指名手配なんかしたら家系図作ってね、何代くらい前でも戸籍謄本集めて、譜票とったら、はとこがとかどこに誰がいるとか、全然そんな人知りませんって人もいるしね、行ってみたら。その辺はもう徹底して調べられますから。ほんとに警察が指名手配してやる気でやれば。僕は捜査一課だったから、みんな重罪事件だから、とことん行きますからね。

家出人・失踪人捜索における警察と探偵の対応

安井:根本的な所をもう一回聞きたいんですけども、その家出人の捜索を依頼するのは、生活安全課、保安係。保安係の方が、捜索されるんですか?

田中:いや、これはしません。普通の場合は。保安係は普通の家出してしまったんです、というくらいの事だったら、身長や、出た当時の服装はどうだとか、血液型は何型だとか書いて貰って、写真を貰って、それをもう本部へ送って、電算登録をするというのが保安係の仕事ですね

後は身元不明の伝送とかが入って来るわけですよ。あの死体とかね。そんな照合は多分本部にやってくるんでね、所轄の方ではそんなんしてる暇もないし、人もいないんで。

安井:じゃあ捜索するのは、何課の方とかあるんですか?

田中:いや、ないです。例えばDVとかストーカーであれば、生活安全課の捜査係という所があって、動きます。これはちょっと事件性があるなとなれば刑事課へ上がってきて刑事が動きます。

あとは、普通の通常のお巡りさんとか、色んな事案取り扱いますね。色んな事案取り扱って、たまたま事故の被害者になったとか、何か被害にあったとか、職務質問したとかで名前とか照会してみたら、家出人捜索願が出てるなというくらいで、それ以外に積極的に捜査はしてくれないと思う。だからそういう意味では、あてにならないですよ。この捜索願、家出人届を出しても、警察は事件性がない限りほとんど動きません。

ただ、通常の警察業務の中で引っかかれば、家出人の手配出てる人だなっていうことくらいです。だからそういう意味では、探偵社や興信所が親身になって動いてあげるというのは大事な事だと思います。これをどんどんアピールするには警察の方ではほとんど動いてくれませんよという事で、こういう探偵・興信所という所で、動いてくれる方がよっぽど、頼りになる。

例えば「うちの子はこういう所で働いてると思う」と保安係にいった所で保安係は動いてくれません。もしそんな情報があった時に、届出を出してる依頼者から、こちらの会社に連絡があれば、すぐに行って捜査出来る。それは届出をしてる人や依頼者にとっては心強い。そういう意味では普通のこういう行方不明になってる人、家出してる人の捜索に関しては、ものすごく頼りになると思う。

安井:ただその現実問題に、探偵と警察の方が、同じ事案を連絡を取り合いながら、情報を共有しながらやっていくという事は、現実問題難しいですか?

田中:いや、そんな事ないですよ。例えば、そういう事案があって、保安の人にそちらの方に届けられてる人なんですけども、「私共の方にこういう事でご依頼がありました」と「私の方から聞くわけにはいかないですけども、そちらの方に、今の状況について、問い合わせがある時に、ご協力お願い出来ますか?」という事であれば、家族と一緒に行かれるなどして、「何かあればご協力お願いします」という事であればね、それなりに対応はしてくれると思います。

それで「会社の方で、もし情報があったらうちに言ってください」と「私共の方で出来ることがあったらします」と言ってくれる可能性は多々あります。だから別に一緒になってやる事というのか、例えば捜査の具体的な事件になってて、捜査の妨害になるというかですね、そこに突っ込まれたら困るんやといったような事があるとですね、やっぱりそこはシャッター落とすでしょうね。犯人捜す時とかは僕らも色んな人利用しますからね。

家出・失踪人の増加と届出が出来る人

安井:失踪してる人が増えてる傾向とかあるんですかね、その年代とか。

田中:特段に増えてるって事はないでしょうけど、この時代的にはそれほど不景気でもないし、それほど皆が明日の生活に困ってなんとか逃げないととか、例えば一時の不動産バブルみたいにね、ああいう風になった時に皆もう逃げまくってたような時代ではないので、逃げてる人といったら少ない。逃げなくてもなんとか生活保護とか色んな経済的な面でしたら色んなバックアップがありますから。支援してもらいやすいというのもあって。

安井:明らかに利害関係がありそうで、債権者が逃げた人を捜したいとして、それは心配でみたいな感じで来るケースってあったりするんですかね。

田中:それは利害関係者では届け出が出来ないので、例えば届け出が出来る人っていうのは決まってるわけですから。

安井:知人とかでは無理という事ですか。

田中:無理ですね。それは誰も身寄りがいないとか、ほんとに誰も届出してないけど心配なんですというのは、会社のね、社長とかが。

安井:それって決まってるんですか。

田中:ホームページで見て頂けたら。行方不明、届け出という所で見て頂いたら、具体的にどういう人が届け出を出来るというのは、全部出てますね。誰でも出来るというわけではない。

例えば、病院で患者の人が診察途中にいなくなってしまったというような場合、その家族とすぐ連絡が取れればいいですけども、連絡がとれないといった場合ですね。そんな時は、とりあえず警察に、病院からこういう人がいなくなったと、心配だし危険だから、申し訳ないけどとりあえず手配だけしてくれないかと言ってお願いする事は出来るんですよ。第三者としてね。そういう事は出来るけど、正式な届けは、家族に来ていただいて、行方不明になった位置ではなくて、居住位置の警察へ届けを出しに行くというのが正式なものです。

安井:聞きたかったことが全部お伺いできました。ありがとうございました。

まとめ

主に警察の捜索の実態が中心とはなりましたが、普段聞くことが出来ないような貴重な内容が詳しく聞けたかと思います。警察OBの田中氏も言われているように、警察の捜査能力は本当に素晴らしく人を探すことのプロであると言えます。

しかし、警察への捜索願いだけでは積極的な捜索はしないようです。というより人員的な問題で、本当に命に危険があったり事件性が無ければしたくても出来ないというだからこそ、捜索願いの他に民間企業である探偵社や興信所に、同時並行して依頼することが早期発見に繋がります。

警察の捜索能力は本当に並大抵のものでは無いので、身内から事件性や命の危険がある家出・失踪人が出た場合には、すぐに警察へ相談し、特異家出人として届出をして下さい。その上で探偵社や興信所にも依頼されることでも、捜査の範囲が広がりますので発見に繋がりやすいです。