探偵が、家出人や失踪人を捜索し発見する為には、聞き込み・取材と言われる調査でいかに成果を出すことが出来るかで、発見に繋がるかどうかにかかってきます。
この作業こそが一番多く、そして大変で難しいのです。
探偵がどのようにして重要な情報を入手しているか?この点についてかなり多くの方によく聞かれる点ですので、今回はかなり詳細にお伝えしていきたいと思います。
1.人捜し調査の基本である取材・聞き込み方法とは?
人捜しにおいて最も基本的であり重要な調査方法は『取材・聞き込み』です。
主要な聞き込み先
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家族
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親族
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友人
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同僚
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大家
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購入店
などの対象者を知る関係者や、
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近隣住民
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店舗
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公共施設
などの不特定多数の人物から、対象者の情報を得るために行います。今後の調査がどの様に進展するかは、取材・聞き込み月の結果によって大きく変わってきます。
『取材・間き込み』のテクニックを向上させることはとても重要なことであります。
2.取材・聞き込みを行う上で注意すべきこと
取材・聞き込みの目的は調査に必要な情報を聞き出すことです。
初対面では第一印象がとても重要です。特に、見知らぬ人から知り得たい情報を入手するには先ず相手に不審がられないことです。警戒心を与えてしまえば情報を得ることは難しくなります。
初対面で相手に好印象を持たせるには、ジャケットや明るいシャツ等を着こなし、最大限身なりに気を配る必要があります。
初対面で相手に好印象を持たせる服の例
そして、はっきりとした挨拶が大切です。挨拶する際には必ず相手の目を見て挨拶をして下さい。身なりは大切ですが第一印象は”目”で決まります。サングラスや色の入った眼鏡は厳禁です。
2度目以降に訪問する必要があることも考え、少しでも良い印象を与えておく事が大切です。
3.取材・聞き込みの基本
必ずICレコーダーで会話を記録する
取材・聞き込み時は、必ず会話の内容を記録します。
ICレコーダーは取材・聞き込みには必ず必要です。メモを取れない状況下でも安心して取材・聞き込みを行うことが出来ます。会話の微妙なニュアンスを聞き返すことで、嘘を言っているのかどうか、信憑性があるのかどうかなどの判断材料にもなります。
場合によっては、女性と1対1になった取材・聞き込みの後に起きてしまったセクシャルハラスメント系のトラブルや、「言った言わない」といったトラブルを回避する術ともなります。また、内容を第三者が聞くことによって、客観的に判断をすることができ、意見を貰うことでインタビュー技術の向上に繋がります。
聞き込みを行うための人物像を事前に作っておく
状況によりますが、基本的には探偵と名乗らずに取材・聞き込みを行い情報を聞き出します。探偵と身分を明かし取材を行った方が良いケースと、明かしてしまうとかえって難しくしてしまうケースがあります。
特に犯罪性の強い案件では必ず身分を偽り取材・聞き込みを行います。それは結果的に自分の身を守ることにも繋がります。ストーリーとキャラクターを考え整合性を考慮し、取材・聞き込みを行う為の人物像を作り上げます。その地域性やシチュエーションに合わせて対応出来るストーリーを考えましょう。
“答えやすい””話しをさせやすい”環境作りを常に心がけます行き当たりばったりの取材・インタビューは禁物です。
相手が答えやすい環境を作るための工夫は必須
手に持つ小道具一つで相手に与えるイメージが大きく変わり答えてもらえ易くなるケースもあります。
『聞き手が聞き易い』と思うことは、『相手も答え易い』ということに繋がります。人間は合わせ鏡です。こちらが苦手意識をもっていると、相手も同じように抵抗感をもっています。善意で答えてくれる相手に負担を掛けない取材・聞き込みを心がける必要があります。
聞き込み取材は、事前準備こそが全て
取材・聞き込みにおいて、会話の主導権を常に持っておく必要があります知りたい情報さえ得てしまえば特別仲良くなる必要も、深く関わる必要も一切ありません。また取材・聞き込みを2度目に行わない相手や、失踪人が元の環境に戻った時に関わる可能性が低い相手には多少強気にアプローチすることも必要です。
親族、友人を名乗る場合、対象のことをあまりにも知らなさすぎると逆に突っ込まれることもあります。会話の主導権を維持するためにも、事前準備は綿密に行う必要があります。
4.話し上手”は”聞き上手
聞き出したい情報、知りたい情報をいきなりすんなり聞けることはめったにありません。何を聞きたいのか、何を知りたいのかを明確に持っておく必要があります。
時にはストレートに、時には遠回しに、時には非協力的な相手には嘘を付いたり、と使い分けられる準備をしておく必要があります。イメージとして、相手の前に出来るだけ答えてもらえ易い”箱”を置いてください。
その”箱”を勝手に聞けてくれるのが理想ですが、そうでない場合は様々な手法を使って”箱”に興味と関心を持たせる必要があります。
5.プロファイリングから見える失踪人の人物像と、失踪人の周辺環境を理解しておく
依頼者に取材を行い、失踪人の残した私物(PC、財布、携帯電話、メールのやり取りなど)などを調ベることで失踪人の人となりと日常が見えてきます。これらの事前調査で得た情報から失踪人をプロファイリングし、失踪人の周囲の環境を理解した上で取材・聞き込みを行うことは非常に大切なことです。
あとは知恵と勘奄働かせて地道な取材・聞き込みを行います。
6.聞き込み・電調トークマニュアル
ネットカフェ・ビジネスホテル・美容院等の利用履歴が残る店舗に関して調査を進展させるために利用履歴を必ず確認して頂く必要があります、相手の心情に訴え、協力を得ることで履歴を確認して頂き、以後、対象者が同店を利用した際に連絡を頂けるよう協力要請を行います。
また、数回に渡り同店舗に伺うことがあるため相手に不信感を抱かせないようにします。
人探しのための聞き込み・取材の実例
人探しにおいて、インターネットカフェ店舗に対して実際に行っている聞き込み・取材のやりとりを紹介していきます。
①データ確認
お忙しい所大変申し訳ありません、少々お時間頂いても宜しいでしょうか、私『◯◯◯(調査員名)』と申します。
『◯◯◯(対象名)さん』を探しております、昨日ご自宅のお部屋から遺書が見つかりまして、奥様、お母様も大変心配されており、何とか助けてあげたくて伺いました。
3日前から『◯◯(捜索地域)』にいるという情報が入りまして、こちらの店舗にも伺っていないか確認をして頂けませんでしょうか。
今後、こちらの店舗に伺うことも十分に考えられます。
『◯◯◯(対象者名)』さんが訪れた際には、ご連絡頂けますようご協力お願い致します。
②電調にて宿泊施設ヘ予約確認
お忙しい所大変申し訳ありません。宿泊予約の確認をお願いしたいのですが
今日から◯◯日までで『◯◯(対象者名)』と言う名前で予約は入ってますでしようか?
相手→どのようなご関係ですか?
同僚の者ですが予約するようにと頼んでおいたのですが予約をし忘れている可能性があり確認お願いします。
相手→入っていませんが
されていませんか、間違えて違う日にちに予約している事はありませんか?来月とか先月とか?
相手→ありません。違う名前で予約をしているとかありませんか?
『◯◯(偽名)』と言う名前でもありませんか?
相手→ありません。
わかりました。こちらでもうー度確認してみます。お手数をおかけしてすみませんでした。失礼します。
③電調にて宿泊施設ヘチェックアウトの確認
すみません。『◯◯(対象者名)』と言う者が宿泊していると思うのですがもうチェックアウトしましたか?
相手→どのようなご関係ですか?
同僚ですが待ち合わせの時間になっても来ないので今、困ってるんです。
相手→そのような方は宿泊されていませんが
そちらに宿泊していると聞いていたのですが聞き間違えたのかも知れません。すみませんこちらで確認してみます。失礼します。
④電調にて宿泊施設ヘ協力を要請
お忙しい所大変申し駅ございません。◯日から◯日の間で『◯◯(対象者名)』と言う者がそちらに宿泊していませんでしようか?
相手→失礼ですがどのようなご関係ですか?
私、親族の者なのですが『◯◯(対象者の下の名前)』が遣書をおいて家出をしてしまいまして・・・今朝そちらの周辺に居ると電話があり、前にそちらのホテルによく宿泊していたと聞いた事がありましたので、宿泊していないかお聞きしたく電話させて頂きました。
相手→調ベましたが宿泊はしていません。
そうですか・・・わかりました。今後、『◯◯(対象者名)』と言った名前『◯◯(住所)』といった住所を書くと思うのでそちらに伺いましたら私の方に連絡を貰えるとありがたいのですがお願い致します。
相手→わかりました。名前と運絡先をお願いします
名前が『◯◯(調査員名)』と申します。番号は『◯◯(電話番号)』です。
(詳しい対象者の特徴を伝える)
お忙しい所本当にすみませんでした。何かありましたら運絡お願い致します。失礼します。
⑤協力要請の例外
相手→個人情報なので教える事が出来ません。
警察の方には届けでは出しているのですが事件性が無いとの事で協力してもらえない状況でして何とか教えて頂けませんか?
相手→すみません個人情報なので教える事が出来ません。
ではご協力頂ける範囲で協力していただけませんか?私の名前と番号を教えますので何かありましたらお願い致します。
相手→わかりました。名前と番号お願いします。
名前が『◯◯(調査員名)』と申します。番号は『◯◯(電話番号)』です。
お忙しい所、本当に申し訳ございませんでした。失礼します。
7.個人情報保護法ヘの対策
2003年(平成15年)05月23日 成立
2005年(平成17年)04月01日 全面施行
平成17年に全面施行された『個人情報保護法』を理由に断られる、拒否をされるケースがとても多くなってきています。ですが、「そうですね。はい、分かりました。」では失踪人、家出人捜しには全くなりません。ケース・バイ・ケースでの攻略方法を常に考えておく必要と、根本的にどういった内容の法律なのが勉強しておく必要があります。
それ以外にも関連する法律は日頃から勉強しておく必要があります。取材時において個人情報保護法を理由に情報公聞拒否、回答拒否が今後増えてくると思われます。
8.取材・聞く込みの準備
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ブレないキャラクター設定とストーリーを作り上げる
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警戒心を与えない自然な設定、ストーリーは何か
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いかなる状況下でも一度組み立てた設定、ストーリーを継続し続けることは出来るか
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相手の返答、突っ込みに即座に答えられる幾つかの会話パターンの準備は出来ているか
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有効なキャラクター設定の例と特徴
保険の外交員
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金銭的な問題ヘの取材・聞き込みに強くそこから会話を膨らませることが出来ます。
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失踪人などの特定の人物の画像を見せての取材・聞き込みは不可能です。
不動産関係業者
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地域性に強く、「その地位の不動産、住宅関運の調査」といった内容で治安や環境について詳しく取材・聞き込みを行うことが出来ることで周辺住民ヘの警戒を与える危険性が比較的軽減されます。
親族
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オーソドックスな手法であらゆる状況で対応出来る取材・聞き込みが行えます。
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失踪人の行方が分からなくなったことを明らかにしなくてはなりません。
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親族という立場からあまりにも失踪人のことに無知だと怪しまれるケースがあります。
友人
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親族と同様に対応力はあります。
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失踪人の行方が分からなくなった事を明らかにしなくてはなりません。
テレピ関係者
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制作会社からの依頼での情報収集や、番相制作といった手段で様々なパターンにアレンジ出来ます。
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『あなたに違いたい』といった類のテレピ番組制作会社を装い取材を行うことで、具体的に失踪人の画像を見てもらい取材・聞き込みを行うことが可能です。また「今後の放送に支障が出る」といった口実で口止めし易いです。
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ビデオカメラを持って取材を行うことでかえって説得力を与えることが出来るので、場合によっては堂々と撮影を行える可能性が高まります。
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疑われる事があり名刺を求められることが多いので架空の名刺を作成しておく必要があります。
新聞記者、雑懿編集者
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地方新聞、雑誌の名目でより狹い範囲の地域コミュニテイに密着した取材ができます。
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ICレコーダーを自然な形で堂々と利用出来る可能性が高まります。
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テレビ関係者同様にマスコミは疑われることがあり名刺を求められることが多いので架空の名刺を作成しておく必要があります。
9.家出人・失踪人の捜索において注意すべき関係法令
探偵業法第6条(探偵業務の実施の原則)<探偵には何ら特別な権限は与えられていない>
探偵業者および探偵業者の業務に従事する者は、探偵業務を行うに当たっては、この法律によりほかの法令において禁止または制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない、とあります。
また、不法侵入、営業妨害などのトラブル、クレームなどを起こさぬよう、コンプライアンスに基づき適切な調査を行います。
刑法第130条(住居侵入等)<不法侵入>
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看取する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたのにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者。
聞き込み時の不法侵入に関しては家出人を探すといった正当な理由が適用されるものと考えられる。
又、管理人が在中する建物は必ず挨拶を行う。しかし、オートロックマンション、関係者以外立ち入り禁止の表記がされた建物、聞き込み時に退去の要求を受ける、聞き込み以外(ポストを覗くなど)の理由で敷地内へ入る等は不法侵入に適用するため、敷地内に入ってはならない。訪問する時間にも気を使い、失礼のない時間帯に伺うものとする。
軽犯罪法 第1条 第28号 <付きまとい>
他人の進路に立ちふさがって、若しくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者。
調査を行うにあたり、なかには見つけて欲しくない理由を持った対象者も存在します、そのような対象者の平穏な生活を害するような行為(張り込みでの発覚・追尾での発覚・接触)同軽犯罪法が適用される可能性が十分に考えられる。その為しっかり案件を把握し、トラブルにならないよう上司の指示を仰ぐ必要があります。
個人情報保護法 第2条 第1項 個人情報とは
生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう
〈例〉氏名、生年月日、住所、学生名簿と学籍番号、など
第23条 第1項2 第三者提供の制限
人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得る事が困難であるとき
第50条 第1項1 通用除外
放送機関、新聞社、通信社その他の放送機関(報遭を業として行う個人を営む。)報道の用に供する目的
まとめ
ここまで詳細な調査方法を公開したことは初めてであり、これ程の調査方法が実践出来ている探偵社や興信所はほとんど無いと言えます。
聞き込みや取材は、どれだけマニュアル化されたとしても、最終的にはそれを実施する人物のスキルや人間性が高くなければ重要な情報を得ることは出来ません。
絶対に探し出してみせる、という強い信念が必要になってきます。