最初に家出原因と家出目的との違いについて考えてみましょう。

目的なく家出する者もいますが、殆どの者は何らかの目的を達成するために家出を決行するものであり、その目的は千差万別です。ただし、家出人の本当の意図は発見後の話を聞かない限り、はっきりとはしません。捜す側の判断は、あくまで推測の範囲でしかないのです。

まず、家を出るということは目的ではなく、家出人にとって許容出来ないことを形成している原因から遠ざかるという行為といえます。家出の目的というのは、そのことから逃避することと考えるべきです。その後に理由づけや、逃避先についての選択、つまり目的が発生すると考えるほうが無難でしょう。

最初の落ち着き先から、留まるか、進むかはそれからの判断になりますが、この段階になれば、その次の目的の段階に入ったともいえるでしょう。

厳密にいうならば、それが希望の実現に向かっていようといまいと、一時的な落ち着き先からどう動くかを判断する段階に入った家出は、家出としての目的は既に達成されていると考えるべきなのです。

家出後、1ヶ月以上も経過している場合は、家出人がその家出の目的を遂行しているという状態にあると認識するべきでしょう。

簡単にいえば家出の目的とは、家を出ることに成功し、次はどうするかということを考えられるようになった段階で、その家出自体の目的は達成されているのです。

家出には必ず原因があります。以下のように「原因の分類」「原因の把握」を各項目に分けて家出の原因を分析することも、重要な課題のひとつです。

原因の分類

①恋愛・結婚②家庭不和③放浪癖④精神障害⑤学校嫌い⑥職場不満⑦疾病苦⑧生活苦⑨事業不振⑩学業不振⑪好奇心⑫都会への憧れ⑬怠惰・なまけぐせ⑭友達に誘われ⑮犯罪発覚を恐れて⑯その他

原因の把握

A直接的な原因…性癖の異常性、計画性の有無、目的の有無、同行者の有無

B同期……………性癖の関連、感情問題、家出に喧嘩・暴力・折檻などの有無

C間接的な原因…性格欠陥の有無、心身の心配、根深い問題の存在、複合性の存在

D目的……………無目的・放浪、自立逃避、金儲け、同棲、逃亡

以上の「原因の分類」「原因の把握」から想定された原因を例題として家出人の現状を推測してみましょう。

例1②家庭不和B動機…家出時に喧嘩・暴力

家庭不和の原因として、価値観の相違、配偶者の浮気が大半を占めているようですが、最近では配偶者の暴力・虐待などの「ドメスティックバイオレンス」(家庭内暴力)という問題が急増している状況にあります。仮に家出人がこの状況から回避するために家出をしたのであれば、問題がきちんと解決しない限り、発見するのは非常に困難と推測されます。それは捜す側にその原因があることが多いからです。取材先もその事実を把握している状況が考えられ、当然、家出人をかばうことが予測されます。このため、実家や親類関係および友人・知人宅に身を寄せていたとしても情報は入りにくい環境にあります。

また、公共・私設を問わず保護施設も全国に多数存在し、それらの施設では身を寄せた者が安心して生活出来るように、原則的に情報の公開はしないことになっています。このことから調査の難易度は非常に高いと思われます。

例2①恋愛・結婚D目的…同棲

家出の原因で非常に多いのが異性問題です。相手との交際・結婚の反対や、不倫の末の駆け落ちは、突発的な行動ではなく、多少なりとも計画的な行動と考えられます。従って、家出前から居住先や就職先などの落ち着き先が決まっていることが多く見受けられます。このケースの家出の場合、必ず同行者がいますから同行者を捜す人物と協力することにより、情報はおのずと豊富になります。

また、生活する上で必要な収入を得るために、家出後、就労する場合でも同行者と同じ勤務先に就職する傾向が高く、違う場所に就職したとしても地域や時間帯は近いものになりますから、捜索範囲が絞り易くなります。

なお、家出人と同行者のどちらが主導権を持ち行動しているかを調査の初期段階で把握することと、お互いの所持金や各種カードの利用状況を確認することは、今後の調査をスムーズに進行させる上で、最も重要であることを知っておいて下さい。

例3⑥職場不満B動機…感情問題

最近の社会情勢として職業問題は大きな課題といえるでしょう。倒産・リストラはもちろん、仕事の失敗などから責任を感じて・上司との不和・使い込みなどの不正の発覚が原因で家出するケースが増えています。これらが原因の家出人はある程度、所持金を持っているケースが多く、悠々自適とはいかないまでも、カプセルホテルやビジネスホテルまたは、ウィークリーマンションなどを利用して一ヶ所に留まらず、放浪しながら生活をしていることが多く見受けられます。

また、完全に社会から逃避している場合も考慮し、ホームレスが集まる場所での調査も行う必要があります。

就業先については明日のことも考えないで、その日暮らしの日雇労働に従事していたり、家出前に安定した就業先を確保しておいての逃避行であったり、家出中の就業についてはその幅があります。家出が単に感情的な暴発によるものであったか、原因が複雑で計画的に行われたかで違いますが、いずれにしても家出人が持っている技術や資格の活用が主体になるのではないでしょうか。その技術や資格の無い家出人の場合、一般的な勤務先としては、誰にでも出来る単純労働・応募条件や採用試験が非常に容易・すぐにでも採用をしてくれるところに就業する可能性が高いということになります。これに、家出人の希望を加えるとするならば、住みこみか、宿舎がついている・家出であることを承知してくれる、もしくはそれがばれないで済むということになるでしょう。

例4⑫都会への憧れD目的…金儲け

家出で自立といっても一攫千金の話はそうそうありませんから、まずは就業から始めなければならないでしょう。

タレント志望など、芸能界や都会に憧れといった家出の場合、有名な芸能プロダクションにタレントとしてスカウトしてもらうか、オーディションに合格することを狙う意外に適当な方法は無いのです。しかし、現在活躍する芸能人が渋谷や原宿でスカウトマンに声をかけられてスターになったなどという夢物語に希望を持ってしまうものです。

家出人に多少の芸能に関する知識と自信があるとしても、成功するのには才能と容姿に恵まれ、プロから見て売り出せる要素となる魅力ある個性が必要とされています。芸能プロダクションには、いかがわしいプロダクションも数多く存在しますから、女性のタレント志望の場合は、特に気をつけなければなりません。

最近では簡易的で低料金の宿泊施設が多数あり、高待遇を望まなければ、それなりのアルバイトを探すことはそれ程困難ではありません。

若い世代の家出こそ、早期発見が最良な結果であると考えられ、早急な対応が必要不可欠といえるでしょう。

例5⑧生活苦C間接的な原因…根深い問題の存在

家出の原因が借金問題であり、債権取り立てから逃避している場合、家族を含んだ同行者が居ればそれなりに情報の入手は容易に出来ます。従って、比較的に発見する可能性は高いと思われますが、単独行動の場合はたとえ落ち着き先が出来ても、自ら身を隠している訳ですから、大変困難な調査といえるでしょう。

また、このケースの多くは社会からの逃避を目的をし、ホームレスになっていることも珍しくはありません。

それらを考慮した上で利用しそうな施設を想定し、協力を依頼することも調査の初期段階で行うことが大切です。